2005/11/20

構造計算書偽造事件

 なんだかやたらと違和感を感じます。

 MSN毎日インタラクティブの記事によれば、
 国土交通省などによると、構造計算は、建築士が地震などの外力、柱の大きさ、鉄筋の数、建物の形状などをコンピューターに入力。コンピューターがそのデータを処理したうえで、基準に適合しているか、しないのかを判断。別々に印刷される入力シートと出力シートを合わせて、建築士が確認申請書を提出する。両シートには、ページごとに同一記号の認定番号が振られており、入・出力が同じプログラムで行われたものであることが証明される。
 姉歯秀次建築士の手口は、入力シートで正規の外力などを入力したものを使いながら、出力シートで半分程度の外力しか入力していないものを使っていたという。このため、入・出力の認定番号が異なっており、「通常ならすぐに気づく単純で稚拙な方法」(国交省幹部)という。

 こんなこと普通はしません。考えられません。だからこそ逆に審査期間の審査をスルーしてしまったのかもしれません。
 しかしこんな単純で稚拙な方法がいつまでも通用するとは考えられません。それを長いあいだ続けていたことが、まず第一に不可解です。

 大きな建物を設計する場合、得意分野ごとに分業して設計が行われます。大きく分けて「意匠」「構造」「機械設備」「電気設備」の4つに分かれます。この中で「構造」の担当者は他の分野の担当者から煙たがれる存在になることが多いのです。
 というのも、建物全体の統括的な計画をする「意匠」担当者にとっても、柱や梁や壁などの間を縫って、場合によっては貫通するなどして配管や配線をしなければならない「機械設備」「電気設備」担当者にとっても、「構造」の担当者が設計する柱や梁や壁などは少なければ少ないほどありがたいし、細ければ細いほどありがたいのです。
 しかし、構造担当者は固い人であることが多いため、「この梁のこの位置で貫通させてくれ」とか、「この壁に穴をあけさせてくれ」とか、「この柱を抜きたい」とか、「この梁はもっと小さくならないか」などのリクエストを断固として受け付けなくて、設計中でも現場でも険悪なムードを作り出す発端となるのです。
 もちろん構造担当者のいうことは正論であり、まったく反論する余地はないのですが、「もうちょっと融通を利かせてよ。」というのが本音です。

 そういうことですから、構造担当者以外の設計担当者はもちろんのこと、現場で施工を担当する職人さんにいたるまで、その建物の柱や梁がやたらと細かったり、鉄筋の量が少なかったりしていることには気づいていたはずなのです。いつも常に気にしているところですから。特に変わったことがしてあるわけではない普通のマンション建築な場合、柱や梁の大きさは大体似たような大きさになるのです。

 この問題の根っこは相当に深いように思います。構造設計者を罰すれば済むことではないのではないでしょうか。

[Architecture]
 


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