2005/02/06

生活の音

 私の好きなFMラジオプログラムの一つに「SATURDAY WAITING BAR AVANTI」があります。

 毎週土曜日の17:00から東京FM系のラジオ局で放送されています。東京のある場所にあるイタリアンレストランのウェイティングバーを訪れた客達の会話をバーテンダーが盗み聞きする、という設定の番組で、毎週興味深く含蓄のあるウィットに富んだ会話を聞くことができます。これを聞くと、バーでお酒を飲みたい気分にさせられます。

 この番組が心地よい原因の一つは、会話のバックに流れる雑音だと思います。他の客の会話や、グラスの中で氷が揺れる音、バーテンダーがシェイカーを振る音など、バーで聞こえてくる雑音が効果的に流れています。
 これはバーの臨場感を作り出すための演出なんでしょうが、狙い以上の心地よさを生み出しています。

 居眠りの心地よさというものがあります。
 例えば休日の昼下がりに軽い昼食を終え、ソファに座ってまどろむ。ラジオから小さな音で心地よい音楽が流れ、キッチンからは昼食の後片付けの音。何とも心地いいですよね。
 無音の状態よりもかえって心地よく眠りを誘うはずです。草原に寝転び、風が草を揺らす音や、小鳥のさえずりが聞こえてくるのとは別の心地よさがあります。なんだか安心感のようなものを感じます。
 
 これはどういうことだろうと考えてたどりついたわたしの答えは、「母親のおなかの中で聞いた音」なのではないか、というものです。
 人間がもっとも守られていて心地よい状態は母親のおなかの中のはずです。これ以上の状態はありません。そのとき聞こえてきた音は母親が家事をする音、誰かと会話をする声、そしてそれらは母親のおなかの肉に遮られて少しくぐもっているはずです。
 この音を心地よいと感じるのではないでしょうか。

 AVATNIの演出家がここまで考えたかどうかはわかりませんが。

[Misc.]


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